そのキスで、覚えさせて
暗い照明の下、あたしはグラスに入ったカクテルを飲んだ。
マルガリータはあたしの喉を濡らし、頭をぼーっとさせる。
こんな優雅なバーに、遥希と来ることが出来たら幸せだろうな、なんて思った。
有名人の遥希とのデートといったら、おうちばかりで。
誠の事件以来、ほぼ同棲しているあたしには、新鮮味がなかったのだ。
だけど、贅沢は言えない。
遥希と付き合っていられるだけで、幸せ者だから。
はぁーっとため息をついた時、
「あ、美咲ちゃんじゃね?」
男性に声をかけられた。