そのキスで、覚えさせて
背の高い男性は、眉をひそめてあたしに言う。
「ごめんね、あの日は。
美咲ちゃんに嫌な思いさせたよね」
まったくだ!
なんて言えるはずもなく。
「いえ、大丈夫です」
お人好しの返事しか出来ない。
そんなあたしに、もう一人の男性が続ける。
「結局、誠は諦めたみたいだな」
そうなんだ。
ホッと胸を撫で下ろすのも束の間、彼は笑顔のままで衝撃発言をした。
「美咲ちゃんいい娘だし、俺、狙ってもいい?」
「え?」
思わず固まってしまう。
……なに、この軽いノリ。
あたし、そんな軽い女に見えるの?
どっちにしても、彼らとこれ以上関わる気なんてなくて、やっと戻ってきた泉に帰ることを告げる。
そして、足速にバーを出た。
あたしには遥希しかいない。
他の男性には興味ないし、ましてや誠の先輩なんて!
逃げるように走った。