A・O・I
「すいません!マティーニを。」
カロンッと、啓介のグラスの氷が音を立てる。
「...........俺はダメだよ。お前が独りでいるのを見たくない。幸せに笑っている所を見るまで、諦めないからな。」
「何それ...........勝手ね。」
「あぁ、俺は勝手だよ。勝手ついでに、これからは開き直ってやる!」
「フフッ...それ狡くない?」
「なんとでも言えっ!!」
(私...........啓介と、笑える様になったんだ...........。)
自分の中での葵の事が、少しずつ消化出来ている事に気がついた。
独りでずっと抱えてた過去を、啓介にぶつける事で、私のぐちゃぐちゃだった気持ちが整頓されて来ている。
「啓介...........ありがとね。」
「え?何いきなり??どうした??蒼君と何かあったか??」
「何で蒼が出てくるのよ。」
「お前が落ち込んだり、頭抱えるのは、殆どあの子が原因だろーが。」
「...........そうかな。」
「で?何があった?」
「家に帰って来ない。」
「はっ?連絡取れないのか?」
「いや、メールは来る。研究が忙しいから、会社に寝泊まりするって。でも、電話出ないから、会社に電話したら、会社には泊まってないって...........。」
「仕方ないだろ仕事なら。特に研究員なんて、勤務時間なんて決まって無いようなもんだろ。」
「でも...........最近、彼女出来たみたいだし。」