A・O・I
「えっ?!!!嘘っ!!!そんな筈ないだろ...........。」
「だって、見たんだもん。うちの会社で受付の女の子と仲良く話してる所。その前に、好きな人がいるって、打ち明けられてたし。多分、間違いないと思う。」
「仲良く話してるからって、彼女とは限らないだろ?」
「でも、一週間も帰って来てないから...........きっと、その娘の所に、泊まってるんじゃないかな?」
「そんな...........。」
「今まで、一週間も帰って来ないなんて、初めてでさ。その娘の事、本気みたいだから。」
「そうか?...........そうかぁ~...........。」
折角の美味しいお酒が、気を紛らわす道具みたいに、只、私の喉を通っていく。
「それで、ヤケ酒してたのか?」
「別にヤケ酒なんかじゃ...........。」
「そろそろ子離れしろよ。」
「してるって!!だから今日だって、お洒落して、シングルライフ満喫してるじゃない!!」
「おいおい!声でか過ぎ、飲み過ぎだぞ?」
「何杯飲もうが、私の勝手でしょ?!」
勢い良く席を立つと、グラッと足元が崩れた。
「うわっ!!」
「おっと...........大丈夫ですか?」
腰を支えられて、下を向いた視界には、深いキャメルブラウンの革靴が目に入った。
「あっ!すいません!!...........大丈夫か?硝子??」