A・O・I
その囁きを聞いた瞬間、ドンッと胸を叩かれた様な衝撃が私を襲った。
私の胸の内側から、激しく何かが打ち付ける。
「それでは、私は飲み直しに行きます。」
「あっ!ご面倒おかけしました!!ありがとうございました。」
啓介に連れられて行く中、後ろ髪を引かれる様にして、その男を見ると、ニッコリ笑って私を見送っていた。
「さっき、伝えた所までお願いします。」
「はい、かしこまりました。」
タクシーに乗り込んで、行き先を告げると、啓介が大きく息を吐いた。
「はぁ~...ごめんなぁ~遅くなって。体調大丈夫か?」
「....あ.......うん。」
「どうした?何か変だぞ?」
「そんな事ないよ.....大丈夫。」
今さっきの事だけど、なんて伝えたらいいのかよく分からなくて、私は黙ってしまった。
「着くまで時間があるから、少し休んだら?家に着いたら起こすからさ。」
「...........うん、ありがと。」
目を閉じて、さっきの言葉を頭の中で何度も繰り返し思い出していた。
“一体、自分は母親だと決めつけたのは誰?”
“息子さんは、あなたを母親だと本当に思ってるでしょうか?”
どうゆう事?
確かに、あの子の母親になろうと必死にやって来た。
それは全部私が勝手にそう思って来たのは確かだ。
そもそも蒼は、私を母親だと初めから認めて無かったのか?