sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜

幸せ報告



詠吾さんは荷物をまとめて私の部屋を出る前に、まだ部屋着姿のままの私を振り返って頭に手を置くといった。


「千那は念のため今日は休んだ方がいい。瀬川の件で社内がごたごたするのはもちろん、社長の孫だからと千那にまで影響が及ぶことを社長自身が心配しているんだ」

「え? でも……」


会社が大変な時に休むなんて、無責任な気がしちゃうな。祖父のことも心配だし……。


「大丈夫。社長のことは必ず守るし、会社の混乱もできるだけ落ち着かせる。才門社長が俺を顧問に選んでくれたときから、社長にも会社にも忠誠を尽くすって決めているから」


頼もしい言葉に安心して、私はうなずいた。

今の詠吾さんは、弁護士の顔をしている。守るべきものを守ると決めた、男らしい凛とした表情。

胸がキュンとして、思わず惚れ惚れしてしまう。


「あとそれから、俺のプロポーズを断ったってことはけっこうなニュースになってるから、驚くと思う。あとでテレビか携帯で見てみな」

「? ……わかりました」

「じゃあな。また連絡する。あ、婚姻届は置いて行くから、時間あれば埋めておいて?」


今度はおそらく仕事用ではない、私だけへの甘い微笑をむけられ、それにもまた胸が高鳴った。

……もう。詠吾さんってば、いったい何種類のキラースマイルを持っているんだろう。

はにかんでうなずいた私の頬にキスを残して、詠吾さんは部屋を出ていく。

階下に降りていく足音のあと、忙しく話す祖父と詠吾さんの声がして玄関の扉が閉まった。


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