sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「え。そんな同盟いつ結びましたっけ……」

「そんなことはどうでもいいのよ。それにしても、あんなハイスペック弁護士のプロポーズを断るなんて千那ちゃんのほうが私よりずっと重症ね。ごめんね先に幸せになっちゃって」


ホホホ、とわざとらしい高笑いをする円美さんに、苦笑してしまう。

なるほど。“さよなら”って、円美さんのなかでまだ寂しい独身生活が長そうな私とは、一足先に違う世界に行きますよーってことか。

……って、あからさまな嫌味じゃん! 円美さんひどい!


「わ、私だって、幸せです! テレビではプロポーズを断りましたけど、今朝改めて返事をしたんですもん。詠吾さんと結婚するって!」

「んな……っ。なにそれ、あのテレビはやらせだったの!?」

「いや、そういうわけではないんですけど……あれには深い事情が」


とはいえこんな電話じゃ説明しきれないよなぁ、と頭を悩ませていると、耳元にふっと笑った円美さんの息遣いが聞こえた。


「なーんだ。千那ちゃんもよかったじゃない」


ちょっとつまらなそうにしながらも祝福してくれる円美さんは、ドライながら結局いつも優しい先輩だ。

私が経理部で浮かないのも、円美さんのおかげだし……口では冷たいことを言いつつ私をいつも気に掛けてくれる姿は、まるで姉のよう。


「円美さん……ありがとうございます」

「じゃあ、お互い詳しい話はランチの時にでも」

「あ、それなんですけど、実は私今日お休みをいただこうと……」


なんで?と問いかけられて、私はおおまかな事実を円美さんに伝えた。

円美さんは副社長の悪事に驚きつつ、けれど「なんかやりそうな顔してると思ったわ」と妙に納得していた。


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