sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「それで、あの夜自分を罠に掛けようとしている女と社長の孫娘が同一人物だってわかったら、最初に感じてた腹立たしさは薄れて、むしろ興味を引かれた。この子は本当に人を愛せないのかって。……たとえ罠に嵌められてもいいから、自分自身でそれを確かめてみたくなったんだ」


少し酔いが回ってきたらしい彼の、普段より甘さの増した声にドキッとする。

カウンターの上で私を見つめる瞳もどこか妖艶で、直視していられなくなった私は手元のカクテルグラスに視線を逃がして聞き返す。


「それで、私を?」

「だから、きっかけは興味本位だった。でも、一度抱いたらもう離せなくなった。本当は、千那の気持ちを自分に向かせようとして抱いたのに、のめり込んだのは俺の方だったんだ」


当時の彼の想いを包み隠さず打ち明けられ、胸が熱くなる。

私の方こそ、大人な彼の一挙一動に翻弄されてばかりだと思っていたのに、実際は逆だったなんて……。


「それからすぐに才門社長に、千那と結婚を前提に付き合いたいってお願いしに行った。社長は弁護士としての俺の能力は買っていたけど、だからと言って可愛い孫娘をそう簡単に渡すわけにはいかない。だから、例の条件を出してきたんだ」

「そうだったんですか。だから、あんな報告書があったんですね……」


< 169 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop