ぼくのセカイ征服
「…スミレ?」
「…あら、時任君…久しぶりね。ところで、いきなり私にぶつかって来て…しかもそのまま押し倒すなんて、どういうつもりかしら?」
…嗚呼、コイツにだけは会いたくなかった。最悪のタイミングで、最悪なヤツに出会ってしまった。今日は最高にして最低の一日だな。
もし、仮に今が朝方で、お互いに顔も知らなかったりしたら、ぶつかった二人の関係は、後々、恋愛関係に発展していたのかもしれないのに。こんな僕にも、再び春がやって来たのかもしれないのに。
なのに。
よりにもよって、ぶつかったのが夕方で、しかもその相手が『箭内 菫』(やない すみれ)だとは。まったく、僕も運が無い。
「ねぇ、いつまでのしかかっている気?」
「…悪い…」
僕はスミレに負担を掛けないように、ゆっくりと、スミレの体に覆いかぶさっている自分の下半身を退かした。その時に、不意に風に靡いたスミレの髪からいい匂いがした、とか何とか言ったら、きっとセクハラになってしまうのだろう。だから、それは口には出さず、心にしまい込む事にした。
「…あ〜あ…。私の一張羅が台無しじゃない…」
「……」
「さっきから、何を黙り込んでいるの?時任君。私は、出るトコに出てもいいのよ?」
「えっと…その…ゴメン…」
「何てありきたりな謝罪の言葉なのかしら。これなら、まだ黙っていた方が良かったわ。」
「…言葉もありません…」
「だから、黙っていた方がいい、と言っているの。聞こえなかった?まぁ、どのみち貴方に黙秘権はないのだけれど。」
「……」
そうなのか。僕に黙秘権は無いのか。自分でも知らなかった。
というか。
コイツの言い分では、僕は卑下される事を覚悟した上で、したくもない謝罪を強制されるのか。それも、コイツが許してくれるまで何回も。
本当に、今日という一日は最低だ。星座占いは悪くはなかったはずだが。
…と、僕が自分の不幸さを呪っていたまさにその時、恐れていた事が現実となった。恐れていた事、というのは、スミレに何かをされる事ではない。ここでスミレに出会う前から、ずっと恐れていた事が、現実となったのだ。僕の背後から、荒い息遣いに交じって、野太い声が聞こえて来る。
「ヘヘッ…やぁっと、ハァ…追い付いたぜ…ハァ…」
…そう、僕達は、三人の中の、一人の男に追い付かれた。
「…あら、時任君…久しぶりね。ところで、いきなり私にぶつかって来て…しかもそのまま押し倒すなんて、どういうつもりかしら?」
…嗚呼、コイツにだけは会いたくなかった。最悪のタイミングで、最悪なヤツに出会ってしまった。今日は最高にして最低の一日だな。
もし、仮に今が朝方で、お互いに顔も知らなかったりしたら、ぶつかった二人の関係は、後々、恋愛関係に発展していたのかもしれないのに。こんな僕にも、再び春がやって来たのかもしれないのに。
なのに。
よりにもよって、ぶつかったのが夕方で、しかもその相手が『箭内 菫』(やない すみれ)だとは。まったく、僕も運が無い。
「ねぇ、いつまでのしかかっている気?」
「…悪い…」
僕はスミレに負担を掛けないように、ゆっくりと、スミレの体に覆いかぶさっている自分の下半身を退かした。その時に、不意に風に靡いたスミレの髪からいい匂いがした、とか何とか言ったら、きっとセクハラになってしまうのだろう。だから、それは口には出さず、心にしまい込む事にした。
「…あ〜あ…。私の一張羅が台無しじゃない…」
「……」
「さっきから、何を黙り込んでいるの?時任君。私は、出るトコに出てもいいのよ?」
「えっと…その…ゴメン…」
「何てありきたりな謝罪の言葉なのかしら。これなら、まだ黙っていた方が良かったわ。」
「…言葉もありません…」
「だから、黙っていた方がいい、と言っているの。聞こえなかった?まぁ、どのみち貴方に黙秘権はないのだけれど。」
「……」
そうなのか。僕に黙秘権は無いのか。自分でも知らなかった。
というか。
コイツの言い分では、僕は卑下される事を覚悟した上で、したくもない謝罪を強制されるのか。それも、コイツが許してくれるまで何回も。
本当に、今日という一日は最低だ。星座占いは悪くはなかったはずだが。
…と、僕が自分の不幸さを呪っていたまさにその時、恐れていた事が現実となった。恐れていた事、というのは、スミレに何かをされる事ではない。ここでスミレに出会う前から、ずっと恐れていた事が、現実となったのだ。僕の背後から、荒い息遣いに交じって、野太い声が聞こえて来る。
「ヘヘッ…やぁっと、ハァ…追い付いたぜ…ハァ…」
…そう、僕達は、三人の中の、一人の男に追い付かれた。