ぼくのセカイ征服
「…ああ、何だか目から鱗って感じだ。本当に、言いくるめるのが上手いよな、お前は。」
「説得が上手い…いえ、『孤高のカウンセラー』の素質があるんじゃないか、とでも言って欲しいわね。それと、時任君。貴方の目から鱗が落ちたら、気色悪いだけよ。」
「誰の目から落ちたって気色悪いだろっ!?」
「………」
「いやいやいや、何で黙り込んでるんだ!?こういう時は、とりあえず頷いてくれ!」
「正直、貴方の目から落ちた鱗よりも貴方自身の方が…」
「気色悪いってのか!?」
「時任君…人の話は最後まで聞くものよ…」
「じゃあ、何だよ!『気色悪い』じゃないのか!?」
「ええ…違うわ。貴方自身の方が『気持ち悪い』。」
「え…?」
「キモチワルイ。」
「いや、聞こえてたから。」

…二度も言わないでくれ。ここまで言われると、人として生きていく自信を無くす。

…まぁ、とにかく、だ。

僕が選ぶべき道――それは、明日、コトハに謝る事だな。おそらく、それ以外の道を選択すれば、僕は大事な友達を一人、失ってしまうだろう。しかも、そうなると、僕の友達の中にマトモな人間が全くと言っていいほどいなくなってしまう。
…その事態だけは避けなければ。
優しいコトハの事だから、きちんと頭を下げて謝ればきっと許してくれるはずだ。
…いや、待てよ。
彼女は優し過ぎるが故に、もし、僕が頭を下げたりしたら、それこそ困惑と自虐の極みに至り、よくわからない謎な展開が繰り広げられていく、という顛末になるおそれが生まれるではないか。
…その事態も避けたいなぁ。個人的に。
むぅ…やはり、教室に入るなりコトハに近付いて、さりげなく「ゴメンな」と囁き、爽やかに着席。
…こんなところが妥当だろう。というか、これしかないな。うん。
これでめでたく問題解決!いやぁ、よかったよかった。

――さて、ここでもう一つ、解決しておかなければならない問題がある。
…それは、何故スミレがここに来たのか、という事だ。
< 47 / 73 >

この作品をシェア

pagetop