ぼくのセカイ征服
――時には、攻撃的にならなければ道は拓けない。保身だけでは現状を変えられないのは紛れも無い事実だ。
なので。

「なぁ、スミレ。一つ、聞いてもいいか…?」

スミレを相手にしては珍しく、直球で聞いてみることにした。

「それが質問なのかしら?」

スミレは、ちゃんとわかっているくせに…いや、わかっているからこそ、こういうお約束な台詞を吐くから厄介だ。

「そうでなく!」
「では、答えは『ノー』よ。」
「質問を聞いてもいないのに断るのはやめてくれっ!」
「まったく、面倒な人ね…。それでは、聞くだけ聞いておいてあげるわ。返答が『ノー』でも良いのなら、だけれど。」
「それじゃあ聞いてくれ。ただ、『イエス/ノー』で答えられる質問じゃないけどな。」
「…そう。」
「ああ。」

…良かった。ひねくれ者のスミレの事だ。頭ごなしに断る言葉を並び立てられたらどうしようかと思っていた。
…しかし、どこまでも狡猾だな。スミレは、一見どうでも良さそうな言葉にも、しっかりと予防線を張っている。もちろん、さっきの場合もそうだ。あの言葉の使い方では、返答が『ノー』だと確定していないため、僕は、質問の最後を『期待する答えと反対の結び』にするという手段が使えない。
言葉の扱いに関しては、どうあがいても、やはりスミレの方が一枚上…………

「…ねぇ、時任君。早くしてくれないかしら?別に、焦らす必要もないでしょう?」
「え?あ、ああ、悪い。少し考え事を…」
「考え事…?私は『わざわざ』貴方に質問をさせてあげるというのに、その態度はあまりにも失礼ではないかしら?少し許せないものがあるわ。」

不意に、スミレの僅かに苛立ちを含んだ声が僕の思考を遮る。そして、どうやらそれに対する僕の生返事が、彼女の苛立ちに拍車を掛けてしまったらしい。口では割とソフトに言っているが、その瞳に宿る闇は、いつにも増して深いものとなっていた。
…まぁ、あの流れには、誰だって腹を立てるだろうけど。
もちろん、それなりに反省はしている。ただ、二度と同じ過ちを繰り返さないと誓えるわけではな………
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