ぼくのセカイ征服
…僕は何か、知らず知らずの内に彼女を怒らせるような事をしてしまったのか?
とりあえず、今のところ思い当たる節はない。

「…っと、死者が出る前に、話を戻すぞ?」
「もしかしてそれは、脱線と掛けたのかしら?あはは、面白いわね。」(棒読み)
「そんな平淡な口調で言われると、全然面白くなさそうに聞こえるぞ?」
「ええ。事実、全く面白くないもの。(棒読み)」
「(棒読み)を口に出したっ!?」
「時任君、よく考えて。脱線した電車をもう一度線路に戻したところで、事態は収拾しないわ。だって、奇跡でも起きない限り、脱線した時点で死者は出ているはずだもの。」
「それはそうだけど、今は電車じゃなく話の話だから……」
「…話が脱線に脱線を重ねているわね。裏の裏は表だけれど、脱線の脱線は、やはり脱線よ。」
「…………………」

…ええい、まどろっこしい!こんな調子では、いつまで経っても話が進まないじゃないか。
――仕方無い、ここは少々強引な方法で。

「じゃあ、今度こそ本当に話を戻す!」
「好きにすればいいわ。それで、話を戻す理由は何なのかしら?」
「お前が何の部活に入ったか聞きたいからだ!」
「そう。それなら、わざわざ話を戻す事に固執しなくても、さっさと私に聞けば良かったのに。」

素直に聞いても、どうせ教える気なんて毛頭なかったくせに。どこまで白々しく、ふてぶてしいヤツなんだ、コイツは?

…でも、とりあえず、今は言われた通りにしてみる。もちろんこれは、それ以外に解決策が無いと判断しての行動だ。

「…で、何の部活に…?」
「これを見ればわかるわよ。」

そう言ったスミレが、改めて僕の目の前に『入部証明書』を差し出した時、僕は自分の目を疑った。

――そこには、はっきりと『入部部活動:チャリティー部』の文字が躍っていた。

「…目が点とは、まさにこのような事を言うのだな。このような事態が遍く世界に点在しているとは。」
「時任君、人格が崩壊して来ているわよ?」
「――はっ!危うく、意識を持っていかれるところだった!」
「意識を持っていかれるというより、落ち武者化していた、というのが適切といった感じの様子だったけれど。」
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