ぼくのセカイ征服

「――話が戻って悪いけど、明日僕が謝って、コトハは許してくれると思うか？」
「気の良い彼女の事だから、誠意が伝われば許してくれるでしょうね、きっと。」
「そうか…。まぁ、謝って関係を修復できたとしても、一度コトハを傷付けた僕が最低なヤツである事に変わりはないんだけどな。」
「確かに、貴方は最低。でもね…」
「そこは否定してくれないのか………ん？」

――刹那、ある事柄が脳裏を過ぎった。それは、今日のスミレの態度がいつにもまして冷血だという謎を解き明かす『鍵』となる事柄であり、それは同時に、陳腐な言い回しになってしまうが、まるで運命に導かれたかのように舞い降りた記憶の断片でもあった。

「…！お前…まさか、挨拶に行かなかった事を根に持っているんじゃ…」
「…何をおもむろに…。一体、何の事かしら？やはり、貴方の思考は理解しかねるわ。」
「いや、そうだ！絶対そうだ！そうに違いない！」

それなら、入部の理由もわかる。当て付けだ。絶対に。
コイツは、他人に対しての怨みを晴らす為なら、自分の生活を平気で売る様な人間だ。もちろん、些細な私怨を晴らす場合ですら、自分の生活の変化を顧みない。

「まったく、思い込みが激しい人ね。私には、何のことだかさっぱり…」

スミレは、何を言っているのか、全くわからないわ、といった様子で首を傾げ、同時に肩を竦めて、白を切り続けるそぶりを見せた。

「白々しいぞ！この部活に入ったのも、おおかた、僕への当て付けってところだろ！？」
「まさか、貴方がそんな風に思っていたなんて…心外ね。この部活には、入りたいと思ったから入った…それだけよ。」
「いや、違うな！絶っっ対、違う！」
「…河童に誓って、違わないわ。」
「か、河童っ！？」

よくもまぁ、そんな単語が突拍子もなく飛び出したものだ。
明らかに、真剣な眼差しで僕を見詰めながら言う台詞ではないだろう。
そういえば、シュンも同じような事を言っていたような…。
ま、まさか、流行りなのか！？河童！！

「ええ。河童に誓うわ。」
「そ、そんなものに誓われても、信じる気には……」
「…それでは、一体何をすれば信じてもらえるのかしら？」
「う〜ん、そうだな…」
「――時任君。今、いやらしい事を想像したでしょう？」
「…はい？」