ぼくのセカイ征服
今のは、軽く流すべき冗談だったろう。わざわざ拾い上げて追い討ちをかけるような真似をする事もないだろうに。

「まぁ、とりあえず、貴方のどうしようもない頭の話は置いておいて、とどのつまり、一体何をすれば、貴方は私を信じる気になってくれるのかしら?」
「…う〜ん……そうだな、先ずは、僕の目を見てくれ。」
「いやん!照れます!急に何を言うんですか!?と〜る先輩の変態っ!」
「あ〜!もう!いちいちやり取りに介入してくるなよ、欝陶しい…!悪ふざけが過ぎるぞ!」
「ひっ、ひどい!何も、そんな乱暴に言わなくても…」
「……!」

僕の叱責を受けたシュンの悲しそうな目を見た時、不覚にも、僕はコトハの事を思い出してしまった。
また、僕は他人との関係をこのまま壊してしまうのだろうか?
気の効いた言葉の一つでも言えば良かったのだろうか?
あれこれと考える内に、頭の中が先刻のコトハの悲しそうな言動で一杯になり、それによって全ての思考が掠われ、一瞬、頭の中が真っ白になった。

そして…

「…わ、悪かったよ。僕が、悪かった。」

無意識の内に、口をついて謝罪の言葉が飛び出していた。

「わかればいいんですよ、わかれば。」

…一体何様だよ、お前は。態度は生意気だし、かなり上から目線だし。
第一、先に悪い事をしたのは明らかにシュンの方だ。
それなのに、こんな横柄な態度。僕は完全に悪役。何だか謝った事が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
それどころか、別にコイツとの関係を守る必要はなかったのでは、とまで考えてしまった。少し悲しそうな顔をされただけで、シュンにコトハの姿を重ねてしまった自分が情けない。
――が、さすがに、関係が壊れても良いという思想は、過剰に冷たい人間の考えだという事に思い至り、とりあえず、今回は自重する事にした。

「――で、スミレ。話を戻すけど、先ずは僕の目を見てくれ。」
「いやん!時任君のバカクズ変態痴漢っ!」
「お前…何か、キャラが崩壊してないか?」
「失礼ね…冗談のわからない人の言う通りになんて、したくはないわ。」
「でも、昔のお前はキャラが破綻したかのような冗談は言わなかっただろ?」
「時間は人を変え(以下略)…」
「それは違うぞ(以下略)ッ!」
「あら?そうだったの?」
「な、何が…?」
< 55 / 73 >

この作品をシェア

pagetop