ぼくのセカイ征服
「(以下略)の部分を略さずに言うと、『時間は人を変えるわ。たとえば、時間のせいで貴方はこんな筋金入りの変態に成り下がってしまった…』だけれど…」
「……………」
「それに対しての貴方の台詞は、(以下略)の部分を略さずに言うと、『それは違うぞ、スミレ。僕は燻し銀のド変態だッ!』…だったでしょう?だから、念のため、確認の意味も含めて聞いてみたのよ。」
「……………」

…面倒くさい。
シュンの介入一つでこんなに話がブレることになるとは。

それにしても、(以下略)の内容の想像(創造)が酷過ぎる。
もちろん、本人は冗談で言っているのだろうが、どことなく冗談に聞こえないのが恐ろしい。
まぁ、恐ろしいとは言っても、コイツが怒っている時に出す、あの言い知れぬ不安感を煽る雰囲気と、本能的な部分で感じる死への恐怖――まるで、背中を何か冷たいものが這っているかのような、高い所から落ちるような、そんな感覚に囚われそうになる怒気――よりは幾分かマシではあるが。
とにかく、『あの』状態のスミレは手がつけられない。『あの』状態の時、全身から立ち昇る覇気は近くにいるだけで生理的な恐怖を煽るほど強い感情の流出を含んでいる。
それは、切な過ぎるほど…そして、悲し過ぎるほど。

「…時任君?」
「…せんぱーい?」
「――ん?え、ああ、悪かった。ふと、少し昔の事を思い出して……」

二人の呼び掛けで我に返り、よく考えもしないで言い訳の言葉を口に出した時、僕は心底後悔した。これではまた、スミレに注意されてしまう。彼女にとって、過ちを繰り返すだけの人間は、明らかに不要なモノと認識すべき対象であり、同時に、最優先で排他すべき対象となる。

――はぁ…どうしようか。せっかく冗談まじりの明るい会話が展開されていたのに、このままでは一気に険悪なムードになってしまうだろう。

…仕方無い。主義には反するが、ここは多少強引に……

「…まったく、貴方は――」
「あー!もう!無駄な詮索はヤメだ、ヤメ!僕は、お前を信じる!もうこの話は終わりっ!質問は!?意見は!?」
「僕はありませんよ?」
「お前は別にいい!」
「信じてくれるのなら、これ以上議論を続ける気はないわ。よって、質問は無し、よ。」
「そうか…」
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