ぼくのセカイ征服
「…で、とどのつまり、僕に何か用事があるわけじゃないんだな?」
「ええ、そうよ。」
「じゃあ、結論は、ただ無意味に僕を見ていただけって事になるのか?」
「無意味ではないわ。正確には、行為の無意味さの中に意味を見出だそうとしていたのよ。」
「…?よくわからないんだが。」
「わからなくても構わないわ。この話が理解出来るほど貴方は敏感ではないし、もし敏感だったとしても、理解して欲しくはないもの。」
「そう、か。さて、もうすぐ日が落ちる。早く帰った方がいいぞ。」
「貴方みたいな変態に襲われたら困るでしょうからね。」
最後まで言ってくれるな、こいつめ。
咄嗟に僕も何か言い返してやろうと思ったのだが、スミレは既に軽快な動きで開いたドアの向こう側まで到達していたので、流石にこれは射程距離圏外だと感じ、思い止まった。
「――あ。最後に、一つ。」
僕が去り行くスミレから目を逸らして、今日、自宅に帰ってからの事を考え始めてから僅かな時間が経とうとしていた時、突然、スミレが何かを僕に伝えるために振り返って、少しだけ歩み寄って来た。
「な、何だよ…?」
「瓜生君には、くれぐれも余計な事は伝えないように……いいわね?」
「べ…別に、言われなくても、もちろん、そのつもりだ。」
「貴方の事だから、特に念を押さなくても伝えないとは思っているのだけれど、『念には念を入れよ』という慣用句もある事だし…いえ、本当に、疑っているわけではないのよ。ただ…私は、不確定要素や不安分子は徹底的に叩き潰さないと気が済まない『たち』だから…貴方なら、その辺りを鑑みて、全てわかってくれるわよね?」
「ああ。とりあえず、厚い信頼どうも、と言っておこう。」
「…折角だし、ついでにもう一つ確認しておくとするわ。もし、伝えたらどうなるかは……言われなくてもわかっているでしょう?」
「それは、もちろん。」
「わかっているなら、それでいいわ。まぁ、実を言うと、別に誰に何を伝えられても、痛くも痒くもないのだけれど。」
「要は、何と無く嫌って事なんだろ?」
「陳腐な表現をするならば、そうなるわね。ただ、だからといって心配は無用よ。もし、伝えた時は…しっかりと、死よりも深い絶望と痛みを延々と与え続けてア・ゲ・る・か・ら…♪」