ぼくのセカイ征服
――『同時刻:生徒会室』――


「――全員、揃ったな?」

広くもなく、狭くもない部屋。影一つ出来ないほど光に満ちているわけではなく、かといってどこまでも深い全てを飲み込むような闇を携えているわけでもない、『ただの』部屋。机と椅子以外何も無い、殺風景な部屋だ。

過剰な表現をするならば、その部屋自体が『無』だった。

その空間の中に、世界の許容量を超えているかのような、尋常ではない存在感を放つ影が7つ、揺らめいている。

「…ああ。そのようだ。」

最初に響いた男の声に、無機質な女の声が答える。無機質…それでいて何か含みを感じさせるその声は、聞いているだけで体の芯まで凍てついてしまいそうな、どこまでも冷たい声だった。

「…では、只今より上半期第一回、生徒会執行部会議を始める。皆、席に着け。今回の議題は、今期の活動予算について、新成立部活動について、反社会的・反道徳的な行為が目立つ部活動の『更正』についての三点だ。」

最初に響いた声の持ち主は他の者達に座るよう促すと、自分も椅子に深く腰掛け、自分がこの『場』を取り仕切る者だという事を誇示しつつ形式じみた言葉を紡いだ。

「ふ〜ん、なぁんだ。『上位職』のメンバーは前と変わってないんだね。これは君の仕業かい、ゼロ?」

不意に、先程まで一度も響いていなかった飄々とした男の声が、最初の声の持ち主の男に話し掛け、すぐに確認を取るように呼び掛ける。

「…不服か?」

ゼロと呼ばれた男はその質問に首を傾げ、怪訝そうに眉をひそめた。

「いいや、別に。規則に違反してるワケじゃないしね。ただ、今まで通り僕は僕のやりたいようにやらせてもらうよ。文句はないよね?」
「…フン、いくら愚痴じみた皮肉を零しても、数多の年月を経ても、結局お前は『そういう奴』だな。その証拠に、お前は『まだ』生徒会副会長の座に居座っている。」
「…そんなことはいいからさ、一つ教えてくれない?今期の生徒会に僕を誘わなかった…要は、僕を生徒会に引き止めようとしなかったのは、単に忘れてたからかな?それとも――」
「生徒会に、お前のような扱いにくい不確定要素…不安分子は不要だ。」

軽い雰囲気を振り撒く男の更なる質問に対し、ゼロという男ははっきりと、決して言い間違えたわけではなく、確定的に言い放った。
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