ぼくのセカイ征服

「…はっきり言ってくれるねぇ。ま、ごもっともだけど。僕が君なら、僕に同じ事を言うよ。ただ、僕は僕を敢えて『誘わなかった』君ほど馬鹿じゃないけどね。」

質問をした男は、少しの罵倒を含んだ愚痴を零すと、けだるそうに机に突っ伏し、口をつぐんだ。

「そういうお前こそ、生徒会の役目を果たさずにぶらついているとんだ間抜けだがな。」

この時、片方の男の『試合放棄』のような行動で、二人の男の口論は加速を止め、一時の収束を見せた。

…様だったのだが。

「――やっぱり、言ってくれる人だよ、君は。」

ゼロという男の最後の言葉を聞いてか、半分上目遣いのような状態で、言い争いの『原因』を作り出した男がねちっこく呟く。だが、呟かれた当の生徒会長は、先程のように挑発には乗らず、方向を転換した話をし始めた。

「…しかし、まさかお前の口から『規則』という言葉が聞けるとはな。明日は雨か…?」
「…いや、雪だろうな。ところで、ゼロ。皆を待たせておいて、このくだらない雑談をいつまで続けるつもりだ?」

突然、ゼロと呼ばれる男の冗談に続く言葉を遮り、先刻の『冷たい声の女』が怒りにも近い音を持った、説教じみた言葉を二人の男に浴びせ掛けた。

「……この会議、開始後何分経った?」

冷たい声の女に、すかさずゼロという男の声が尋ね返す。

「今、この瞬間で6分と23秒だ。ヘイト、お前はもう少し副会長としての自覚を持て。ゼロ、お前は安い挑発に乗るな。もう少し大人になれ。さぁ、これで余計な話は終わりだ。本題に入るぞ。」
「アヤナぁ、僕は『副会長になってあげてる』んだ。少しくらいのワガママは大目に見なよ。」

ヘイトと呼ばれた軽薄な雰囲気の男は、まるで新しいおもちゃをねだる子供が出すような猫撫で声で、アヤナという名の冷たい声の持ち主に自分の正当性を主張する。

が、しかし。

「その話は終わりだ。これ以上妨害するのはやめろ。さぁ、アミ。予算についての説明を頼む。」

アヤナという女は意に介さないといった様子で、男の猫撫で声を半ば強引に振り切り、そのままアミという女に話を振った。
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