呪われ姫と強運の髭騎士
 悪魔の誘惑はどうしてこう魅力的なのか。
 
 それは、人の心の深淵に潜む隠された欲求を、上手く引きずり出してくるからだ。
 
 ソニアはそう思う。
 
 私は家族に会いたい。

 家族揃ってまた、あの幸せだった日々に戻りたい。
 
 父や母に抱き締めてもらって甘えたい。
 
 兄達とまた、くだらない口喧嘩に泣いて笑って言って欲しい。

『愛してるよ、ソニア』と

 
 ――でも!

「そんな日は帰ってこないと知ってる! そんな現状にしたのは貴方達だとも知ってる! バフォメット! 貴方の取引は信じない!」
 
 ソニアは大きく深呼吸をし、バフォメットに向かって華やかな笑顔を見せた。

「私が今、信じているのはクリス様です」
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