呪われ姫と強運の髭騎士
告白は私から

(1)

 賑やかな昼間の城下街を、立派な馬車が何台も連なって通り過ぎる。
 
 特に中央の馬車は壮麗で、四頭の白く美しい馬が誇らしげに闊歩している。
 
 住民達は馬車に引かれないよう端に避けて、その行列を目を皿のようにして見送っていた。

「豪華な馬車ね。何処かの国からの招待客かしら?」
 
 街娘が自分が着飾って馬車に乗っている姿を想像しながら、一人心地に呟く。

「違うよ、馬車の後ろに付けられた紋章を見てみな。――あれは国内屈指の資産家の、クレア家の馬車さ。夏至祭にお出でになったんだろう」
 
 街娘と果物の仕出しをしていた青年が言いながら、ほら、と通り過ぎていく馬車の後ろを指差す。
 
 それを聞いて街娘だけでなく、近くで屋台の準備をしていた民達が一斉に騒ぎだした。

「あれがクレア家の!」
「悪魔を追い払ったという、勇ましい姫様の!」
「お顔を拝見したかったわ!」
「可愛らしいお方だと聞いているよ。凄いよね、可愛いだけでなく、呪いをはねのける力と知恵がおありなんだって」
「きっと神様に、全てを与えられたお方なんだよ」
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