呪われ姫と強運の髭騎士
『クレア家の女当主が、長く苦しめられてきた悪魔の呪いをはねのけた』
 
 その事件は貴族達だけでなく、国の住民達の間にも瞬く間に広がった。

『知恵も勇気もある、しかも若く可愛らしい姫当主』
 
 ここ三ヶ月間、持ちきりの話題となっていた。

 
 数台連なって走っていた馬車は、中央の一際見事な馬車とその前後の馬車を残して、王宮へと向かった。
 
 残った馬車は方角を変え走り、中央教会に隣接して建てられた修道院の前に止まった。
 
 若い従者が馬車の後ろから降り、扉を開ける。
 
 差し出された白い手を従者が恭しく取ると、馬車から出てきた令嬢の足元を気にしながら、地へ降ろした。
 
 初夏に相応しい淡いグリーンのドレスに、金茶の緩やかに波打つ髪をレースのベールで覆う。
 
 ヒヤシンスブルーの大きめな瞳は清涼感溢れ、小さめの口にはオレンジの紅が鮮やかに乗せられ、快活そうに笑みを形作っていた。
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