反逆の騎士長様
第3章*in国境の港町
騎士長様と王子様
カァ…カァ…
カモメの声が、海風と共に聞こえてくる。
樹海を抜け、太陽が真上に輝くお昼過ぎ。
私達は国境の港町の目の前まで来ていた。
「それにしても、すげー数の船だなー。
外国の貿易船ばっかりだ。」
ラントが、港にとまっている船を見つめながら口を開いた。
確かに、青い海に映えるように色んな色の船がとまっていて、それぞれ国旗が風になびいている。
「王子様の船はもう到着しているのでしょうか?」
私がそう尋ねると、ロッド様は目を細めながら私に答えた。
「あぁ。ノクトラームの国旗を掲げた船が波止場にとまっている。
おそらく、アルトラはこの港町のどこかにいるだろう。」
…!
私は、胸がどきん、と鳴った。
…ついに、王子様に会えるんだ…。
なんとなくそわそわして落ち着かないでいると、ラントが顔をしかめながら口を開いた。
「…あの天然人タラシ王子とセーヌが夫婦になるなんて、いまいちピンと来ねーな。
アルトラ王子は、一生結婚しなさそうと思ってたのに。」
えっ!
私は、その言葉にラント向かって尋ねた。
「ラントは、王子様に会ったことあるの?」
「当たり前だろ!俺だって騎士団の一員なんだから。
自分が仕える奴のことぐらい知ってるだろ、普通。」
そ、そうだよね。
確かに、いくら命令とは言っても、見ず知らずの人の為に命張ったり出来ないよね。
…それにしても、“天然人タラシ”って?
私が考え込んでいると、ロッド様が私を見ながら口を開いた。
「アルトラは変わっているところもあるが、いい奴だぞ。頭が切れて聡明だし、魔力も高くて戦に強い。温厚で人当たりも良いしな。
…心配しなくても、きっといい夫婦になれる。」
…どくん。
微かに、心が揺らめいた気がした。
自分の奥底に生まれた淀みの正体は分からなかったが、どこか、胸が痛む気がする。
…?
なんとなく、モヤモヤする。
これが噂の、“マリッジブルー”?
ロッド様は私と王子様の出会いを祝福してくださっているのに、私がこんな気持ちになってたら悪いよね。