見えないなら繋いで
気付くと体育館まで戻ってきていたが誰も居なかった。
きっとみんな校庭に出ていったままなんだ。
どうしよう。
真壁くんなんて言ったんだろう。
もう、分からないよ。
涙が溢れて止まらなかった。
初めてのことでどうしていいか、何が正解なのか分からない。
「神月?」
「え…」
不意に声がかかって振り向くと、そこに立っていたのは陸上部の元キャプテン、藤倉直哉くんだった。
藤倉くんは引退してもよく部活に顔を出すくらい陸上部が好きで、そのイケメンと呼ばれるのに不足ない容姿もあって学年どころか学校中の有名人で人気者だ。
クラスが一緒になったことはないけど、体育祭の実行委員などで一緒にいたこともあって数少ない男友達の一人だった。
「大丈夫か?」
「…うん」
「それ大丈夫じゃないだろ。寂しいからって一人で泣くなよ。余計寂しくなるって」
「寂しいけど、そうじゃないよ」
頭をポンポンと優しく叩く藤倉くんの子供扱いに甘えてしまったのか、つい反射的にそう言っていた。
「そうじゃないって?」
「…藤倉くんに関係ないし」
「えー人が慰めてあげてるのにひどいな」
「藤倉くんみたいにモテモテな人には分からないよ」
「あ、そういう決めつけよくないと思うな。うん、今ので分かったけど、ずばり恋の悩みだ。好きな人が告白されてるところ見ちゃったとか」
「なんで分かったの!?」
そっぽ向いてたはずなのに言い当てられて勢いよく顔を上げた。
「うーん、モテモテだから?」
「自分で言う?」
「嘘。俺もこの間フラれたから」
「え、嘘だ」
「ほんと。気になってた子からバレンタインちょっと期待してたんだけどがっつり義理チョコだった」
「藤倉くんでもそんなことあるんだ…」
「あるよ。俺なんか普通だって」
普通ではないと思うけど。
でも、そっか。
上手くいってるように見えてもそうじゃないこともあるんだ。
「…私、バレンタインに告白して、彼氏、できたの」
「なんだよ、やるじゃん」
「…でも、引っ越しとかあるからって言われて迷惑にならないようにしてたら、もう三週間連絡してなくて」
「それはまた極端だな」
「だって、彼氏できたの初めてで、どうしていいか分からなくて…友達に、自然消滅してないって言われて…」
だめだ、また視界が歪んでしまう。
「神月、それずるい」
「何が…っ?」
「彼氏できたの初めてって言うけど、何回付き合っててもその人と付き合うのは初めてじゃん。初めてを言い訳にするのはずるいと思う」
「………」
まさに目から鱗みたいで、涙が引っ込んでしまった。
初めてを言い訳にするのはずるい。
確かに、そうかもしれない。
初めてだから、嫌われたくないからって何も行動しなかった。
自然消滅なんて言葉が出てくるのも当たり前だ。
「藤倉くん、ありがとう!私、今から会ってくる」
「…吹っ切れたみたいだな」
「うん、それじゃ行ってくる!…あ、藤倉くん、大学も一緒だよね、またよろしくね!」
「分かったから、転ぶなよ」
走り去る私に藤倉くんは呆れたように笑って手を振ってくれた。
ちゃんと気持ちを伝えて、真壁くんの気持ちも聞かなくちゃ。
走りながらスマートフォンで真壁くんのラインを呼び出す。
すると画面を開く前に着信画面が現れた。
発信相手は、真壁くんだった。
きっとみんな校庭に出ていったままなんだ。
どうしよう。
真壁くんなんて言ったんだろう。
もう、分からないよ。
涙が溢れて止まらなかった。
初めてのことでどうしていいか、何が正解なのか分からない。
「神月?」
「え…」
不意に声がかかって振り向くと、そこに立っていたのは陸上部の元キャプテン、藤倉直哉くんだった。
藤倉くんは引退してもよく部活に顔を出すくらい陸上部が好きで、そのイケメンと呼ばれるのに不足ない容姿もあって学年どころか学校中の有名人で人気者だ。
クラスが一緒になったことはないけど、体育祭の実行委員などで一緒にいたこともあって数少ない男友達の一人だった。
「大丈夫か?」
「…うん」
「それ大丈夫じゃないだろ。寂しいからって一人で泣くなよ。余計寂しくなるって」
「寂しいけど、そうじゃないよ」
頭をポンポンと優しく叩く藤倉くんの子供扱いに甘えてしまったのか、つい反射的にそう言っていた。
「そうじゃないって?」
「…藤倉くんに関係ないし」
「えー人が慰めてあげてるのにひどいな」
「藤倉くんみたいにモテモテな人には分からないよ」
「あ、そういう決めつけよくないと思うな。うん、今ので分かったけど、ずばり恋の悩みだ。好きな人が告白されてるところ見ちゃったとか」
「なんで分かったの!?」
そっぽ向いてたはずなのに言い当てられて勢いよく顔を上げた。
「うーん、モテモテだから?」
「自分で言う?」
「嘘。俺もこの間フラれたから」
「え、嘘だ」
「ほんと。気になってた子からバレンタインちょっと期待してたんだけどがっつり義理チョコだった」
「藤倉くんでもそんなことあるんだ…」
「あるよ。俺なんか普通だって」
普通ではないと思うけど。
でも、そっか。
上手くいってるように見えてもそうじゃないこともあるんだ。
「…私、バレンタインに告白して、彼氏、できたの」
「なんだよ、やるじゃん」
「…でも、引っ越しとかあるからって言われて迷惑にならないようにしてたら、もう三週間連絡してなくて」
「それはまた極端だな」
「だって、彼氏できたの初めてで、どうしていいか分からなくて…友達に、自然消滅してないって言われて…」
だめだ、また視界が歪んでしまう。
「神月、それずるい」
「何が…っ?」
「彼氏できたの初めてって言うけど、何回付き合っててもその人と付き合うのは初めてじゃん。初めてを言い訳にするのはずるいと思う」
「………」
まさに目から鱗みたいで、涙が引っ込んでしまった。
初めてを言い訳にするのはずるい。
確かに、そうかもしれない。
初めてだから、嫌われたくないからって何も行動しなかった。
自然消滅なんて言葉が出てくるのも当たり前だ。
「藤倉くん、ありがとう!私、今から会ってくる」
「…吹っ切れたみたいだな」
「うん、それじゃ行ってくる!…あ、藤倉くん、大学も一緒だよね、またよろしくね!」
「分かったから、転ぶなよ」
走り去る私に藤倉くんは呆れたように笑って手を振ってくれた。
ちゃんと気持ちを伝えて、真壁くんの気持ちも聞かなくちゃ。
走りながらスマートフォンで真壁くんのラインを呼び出す。
すると画面を開く前に着信画面が現れた。
発信相手は、真壁くんだった。