【B】眠らない街で愛を囁いて



……千翔さん……、ねぇ……もっと貴方を知りたいって
煩悩を消さなくてもいいですか?

貴方に愛を囁いてほしいって……そんな望みをを押し殺さなくてもいいですか?




ベッドにゴロっと転んで、織笑の報告文章を読み返しながら、
なんだか頬が緩んでいくのを感じてた。





ただいま。
明日、9時から13時で仕事復帰するよ。

千翔さん、そんなことやってくれてたんだね。

仕事のことは気にしなくていいって言ってくれてたけど、
そんなことしてくれてたんだね。

教えてくれてありがとう。


私も流石に化粧もファッションも覚えなきゃいけないのかなー。
また相談に乗ってね。




そうやって返信して私はその夜、
久しぶりに自宅でゆっくりと眠ることが出来た。



翌朝、いつものようにアラームで目を覚まして朝からお風呂に入る。


そしてクローゼットの前、鏡を見ながらちょっと服を引っ張り出してみるけど、
どれも似たようなものばかり。

少し長めのTシャツにGパン。



……ホント、私……女の子失格かな……。



そんな呟きを零しながら、いつものように洋服を身に着けて職場へと出勤した。 




更衣室で着替えを済ませるとロッカーにはあの日、
千翔さんが無造作に片づけてくれたのかもしれないシャツと制服の上着が入ってた。


揚げ物をしているせいか、少し匂いの残る制服に思わず手を伸ばす。


入っていた制服を、持ってきた制服の紙袋へ突っ込むと、
早々に着替えてお店へと顔を出した。



「おはようございます」

「あぁ、おはよう名桐。
 体はもう大丈夫なのか?」

「ご迷惑おかけしました」


深々とお辞儀をして私は仕事へと復帰した。
その日も13時前に、千翔さんはコンビニへと姿を見せてくれた。




「あっ、叶夢。
 王子様、登場だよ」


そうやって耳打ちする織笑。



『王子様』って言うその言葉の響きがこんなにもドキドキさせて、
なんか意識すればするほど千翔さんの顔を見ることが出来なくなってく。



「叶夢ちゃん、今日から復帰したんだね。
 今日は何時まで?」

「あっ、千翔さんって呼んでいいですか?
 叶夢、もう2分であがりですよ。

 好きなところにお持ち帰りしちゃってください。
 私が許します」



私が許しますって織笑、なんてこと言うのよ。

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