【B】眠らない街で愛を囁いて



そう……清々しい開放感が俺を包み込んでくれた。

叶夢はただ俺に抱きしめられたまま、じっと聞いてくれているみたいだった。



「だけど……叶夢、俺が叶夢を気になるのはそれだけじゃないんだ。
 俺が……傍に居たいから。

 叶夢……愛してるって言ったら、叶夢は俺を受け入れてくれる?」



そう……俺にとって叶夢は絶対必要の存在で、
そして……俺の全てで守りたい少女。


そういっても過言ない、大きすぎる存在。


叶夢はただ無言のまま、その手を俺の掌へと重ねた。
僅かなその行為が俺にとってものリミッターを少しずつ崩壊させていく。


背後から抱きしめていた腕をほどいて叶夢の隣へと腰を下ろすと、
そのまま両肩を抱いた後、ぎゅっと抱きしめて唇を彼女の元へと降らせた。


柔らかな感触が俺を包んでいく。
彼女が暖かい涙を静かに流しているのを指先で感じていた。



このまま抱きしめてしまいたい衝動を何とか踏みとどまらせて、
俺は彼女を再び抱きしめたまま、お互いの温もりを感じあった。



その夜、53階のレストランを予約する。
いつも俺たちが行きつけている父の親友の店へと連れて行った。



ドレスコードが必要なその場所も何時行っても使用することが出来る、
一族専用の部屋なら問題はない。


次から次へと出てくるフランス料理を食べ終えると、

「あぁ、もうお腹いっぱいです。
笑わないでくださいね。フランス料理なんて食べたの、高校の修学旅行以来ですよ。
 その時は食べたって言っても、礼法の授業のテストも兼ねられてて、味なんてわかんなかったんです」


そう言いながら、彼女は最後の飲物まで楽しんだ。



「千翔さん、本当に私とは別次元ですよ。
 あっ、まだ知らないのって年齢もだ。
 お幾つなんですか?」

「23」

「わぁー、そうなんだ。
 五歳って気にしますか?」


五歳?そんなの最初から気にしたことなんてない。
だって俺は叶夢を見つけてしまったんだから。
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