誰にも言えない秘密の結婚
お店の前で社長と別れた。
大きなクマのぬいぐるみは藤原さんが抱えて持ち、その隣に私が並び歩く。
案の定、周りからはジロジロ見られ、クスクス笑われる。
「あの、藤原さん?」
「ん?」
「私が持ちましょうか?」
「いいよいいよ」
「でも……」
男性が持つより女の私が持った方がいいような……。
「これ、結構重たいから、吉田が持ってフラついて倒れても危ないし。それにあと5分も歩けばマンションに着くしね」
「すみません……」
「吉田は悪くないよ?悪いのはこんなものをプレゼントした空翔なんだから」
藤原さんはクマのぬいぐるみを私の方に向けて、手を動かしながら、まるでクマのぬいぐるみが喋ってるようにしてそう言った。
それが面白くて思わずクスリと笑ってしまった。