誰にも言えない秘密の結婚




「早く呼んでよ」



なかなか名前を呼ばない私に、藤原さんはそう言ってニコリと笑った。



「え、えっと……」



名前で呼んでと言われても……。


なんて呼んだらいいの?


拓海?拓海くん?拓?


それとも……たっくん……とか?



「…………拓海、さん?」



やっぱり無難に拓海さん、だよね。



「呼び捨てでもいいのに」


「よ、よ、呼び捨てなんて、絶対に無理、です……」



拓海さんと呼ぶだけでも、どれだけ勇気がいったことか。



「拓海さんで勘弁して下さい」


「わかった。いいよ」



藤原さん……ではなく、拓海さんの手が伸びてきて私の頭をポンポンとした。




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