誰にも言えない秘密の結婚



何かに引っかかり、コーヒーを拓海さんのズボンにぶち撒けてしまった。



「熱っ!」


「あ、ゴ、ゴメンなさい!」



私は急いでキッチンに行き、タオルを濡らして事務所に戻った。



「大丈夫ですか?本当にゴメンなさい……」


「大丈夫だよ。一瞬、熱くてビックリしただけだから」


「服、着替えた方がいいと思います」


「うん。そうする」



拓海さんは着替えるために事務所を出て行った。


床には引っかかるものなんて何もない。


でも確かに何かに引っかかった。


西山さんがクスクス笑ってるのが聞こえ、そちらの方を向くと、有本さんと一緒になって笑ってる。



「ダッサ!」


「ねー!」



あー……わかった……。


有本さんか、西山さんが足を出して私を引っ掛けたんだ。


しばらくして着替えを済ませた拓海さんが事務所に入って来た。



「吉田も大丈夫?」


「はい。ボーとしちゃってました……」



私はそう言って苦笑いを見せた。



「汚れた服、洗濯するので洗濯機に入れといて下さいね」


「うん」


「コーヒー淹れ直してきますね」



私はキッチンに戻った。


ここで泣いたりしたら、あの人たちの思うツボだ。


だから知らん顔してるのがいい。






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