誰にも言えない秘密の結婚



事務所の玄関を静かに開ける。


靴を見ると、社長と拓海さんのだけしかなく、あの人たちはいないことにホッと一安心。


静かにゆっくりサンダルを脱ぎ、音を立てないように廊下を歩く。


事務所のドアを開けようと、ドアノブに手をかけたところで社長の声が聞こえてきた。



「拓海?結婚生活はどう?」


「どう?って、まぁ、楽しくやってるよ」


「まさか、拓海が結婚するとはね。俺はお前の中にはまだミナちゃんがいるとばかり思ってた」



知らない女性の名前。


ミナちゃん?誰?


拓海さんの元カノ?


…………そう言えば、結婚の報告を社長にした時に、社長は何か言いたそうだった。


それが、そのミナちゃんと関係あるの?



「ミナのことは忘れたわけではないよ?」



ドクリと変な胸の高鳴りがした。


忘れられない女性がいるのに、私と結婚したの?


拓海さんは私に逃げ道を作るためだけに結婚した。


わかってる。


拓海さんが私に愛情がないことなんて……。


私に優しくしてくれるのも、それは愛情ではなく拓海さんの性格がそうなだけ。


だけど……。




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