誰にも言えない秘密の結婚
拓海さんが一冊の旅行本を真剣に見ている。
「神戸、ですか?」
「あ、あぁ、うん」
私の問いかけにそう言って笑顔を見せた。
「俺が就職して先輩について初めて出張に行ったところが神戸だったんだ」
「へぇ!そうなんですね!」
「なんか、懐かしいなと思って、つい……」
「思い出の場所なんですね」
「そうだね」
「じゃあ、行きましょうよ!神戸」
「えー!」
拓海さんは驚きながらも顔は笑ってる。
「私、神戸に行ったことないので、行ってみたいです」
「じゃあ、行こうか?……って、俺もその出張で行ったきりだからなぁ……案内とかは出来ないけど……」
「それでもいいです。拓海さんの思い出の場所に行ってみたいんです」
「わかった。じゃあ、これ買おうかな」
拓海さんはそう言って、レジに向かった。
私も隣を歩く。
その時、拓海さんが私の手をギュッと握ってきた。