誰にも言えない秘密の結婚
「…………私は、いいです」
「でも……吉田にちゃんとお礼がしたいし……」
私が断ったのに西山さんは諦めない。
しかも、いつもの西山さんと違う。
入社から今日まで、無視か辛く当たられてきたのに。
仕事の手伝いをしてもお礼なんて今までなかったのに。
何で今更?
中学の時、たいして仲良くもなかった子たちに突然遊びに誘われたことがあった。
ーー今まで意地悪してゴメンね。
ーー吉田さんと仲良くなりたいから。
そう言われた私は嬉しくて、休みの日に遊ぶ約束をした。
でも……。
約束の場所に約束の時間に行ったのに誰も来てなくて、虚しく時間だけが過ぎていき、夕方になっても誰も来なかった。
次の日、学校に行くと誘って来た子たちが私の机の周りを囲った。
ーー吉田なんかと仲良くするわけないじゃん。
ーー1人で夕方まで待つとかウケる〜。
クラス中から起こる笑い。
この人たちは、あの場所にいて、私が待ってる姿を見て笑ってたんだ。
その時、初めて騙されたんだと知った。
そんな辛い思い出が頭の中に鮮明に蘇り、また同じ事をされるんじゃないかという恐怖に襲われた。