誰にも言えない秘密の結婚



しばらくして、拓海さんが病室に戻って来た。


はぁ、はぁ、と息を切らし、急いで戻って来たことがわかる。


私が目を覚まし、社長と話をしている姿を見た途端、私の側に駆け寄って来た。



「明!」



横になっていた私の身体を抱きしめる。



「た、拓海さん、重い……」


「あ、ゴメン……」



私から離れた拓海さん。



「空翔、ありがとな」


「いや、じゃあ、俺は事務所に戻るわ。また夜に来るから」


「うん」


「じゃあ、明ちゃん。またね」


「はい。ありがとうございました」



社長は病室を出て行った。


社長が座っていた椅子に、拓海さんが座る。



「明、ゴメンね……」


「どうして謝るの?謝らなきゃいけないのは私の方だよ?」



拓海さんが私の手をギュッと握る。



「約束したのに……俺、明を守るって約束したのに……守れなかった……」



拓海さんは俯き、鼻を啜る。


拓海、さん?


泣いてるの?


拓海さんの顔を見ると、目から涙がポロポロと溢れている。


私は少し身体を起こし、拓海さんの頭を撫でた。



「明……」



顔を上げた拓海さんの目は真っ赤になっていて、頬を涙が伝っている。



「拓海さん、もう泣かないで?」


「明……」


「拓海さん、ありがとう」



私は拓海さんにそう言って笑顔を見せた。




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