誰にも言えない秘密の結婚




「あ、明〜!」



朝食の用意をしていると、寝室から拓海さんの苦しそうに呼ぶ声が聞こえてきた。


また?


お味噌汁を作っていた鍋の火を止め、寝室に急いで行く。



「明、助けて……」



ベッドで寝ていた拓海さんの上に、夏が乗って顔をペチペチ叩いている。


どうやら、これが彼女のマイブームらしい。


毎朝、夏の攻撃にうなされている拓海さん。


でもその光景が可笑しくて、可愛くて、ついつい笑ってしまう。



「なっちゃん?パパ、痛い痛いだよ?」



そう言って、夏を拓海さんから離して隣に寝かせるけど、隙を見て、また拓海さんの上によじ登ろうとする夏。


拓海さんは夏を抱きしめたまま、起き上がり、身体をくすぐる。


キャーキャー声を上げ、笑う夏。


これがして欲しいんだね。


仕事に行ったら、夏が寝ている時間に帰って来る拓海さん。


時には泊まりの時もある。


だからこの朝は父と娘の貴重なコミニュケーションの時間。




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