誰にも言えない秘密の結婚
「吉田に辞められたら困るんだけどな」
藤原さんの言葉に胸がドクンと跳ねた。
それは雑用する人間がいなくなったら困るって意味だってわかってる。
だけど、そんなこと言われたら……。
「でもさ、こういうこと言うのはダメだとわかってるんだけど……」
藤原さんはそこで一旦言葉を切った。
「何を、ですか?」
「女の子って、いくらでも逃げ道があるだろ?」
「えっ?」
どういう意味?
「転職とか結婚とかさ」
「私は結婚も転職もしませんよ」
「何で?転職はしないにしても、いつか結婚はするだろ?」
「一生、自分1人で生きていくって決めてますし、それに私、ブスだから……私みたいな女を相手にする男性なんていませんよ……」
「なんで自分をそんなふうに言うの?」
「だって……」
女に困っていないアナタにはわかりませんよって言葉をグッと飲み込んだ。