誰にも言えない秘密の結婚
「俺と結婚しちゃう?」
はい?
今なんと?
結婚?
えっ?
「………………えっ?えぇぇ!!!」
静かな公園に私の声が響いた。
「ちょ、ちょっと、ま、ま、待って下さい。け、け、結婚って……」
「とりあえず落ち着こうか」
藤原さんが私の肩をポンポンと軽く叩いた。
「い、いや、無理ですって」
こんな状況で落ち着けって言われても……。
「藤原さん?」
「ん?」
「結婚って言葉を軽々しく言わない方が……」
「軽々しく言ってないけど?」
「好きでもない女に結婚っていうこと自体が軽々しいです……」
「俺、吉田のこと嫌いじゃないし」
「でも好きではないでしょ?」
「うーん……」
私にそう言われ、考え込む藤原さん。
ほら。
やっぱりそうだよ。
「そう聞かれると、なんて答えていいのかわからないけど……。だって吉田とは付き合ってるわけでもないし、事務所でもあまりって言うか、会話は挨拶と業務連絡だけだし、こんなふうにいろいろ話ししたのは初めてだし……でもな……」
「この話は無しです。事故です。夢です。私は忘れるので、藤原さんも忘れて下さい」
私はそう言ってベンチから立ち上がった。