誰にも言えない秘密の結婚
「ちょっと、待ってよ!」
藤原さんもベンチから立ち上がる。
そして、私の手首を掴んだ。
こんな時でも私の胸は煩いくらいドキドキと鳴ってる。
しばらく続く沈黙。
藤原さんを見上げる私と、私を見下ろす藤原さん。
「…………藤原さん?」
「ん?」
「私と藤原さんは、ただの上司と部下の関係、ですよね?」
「あぁ……」
「会話も挨拶と業務連絡しかしたことないですよね?」
「あぁ、そうだな……」
「何かの罰ゲームですか?」
私はそう言って周りをキョロキョロ見渡した。
あの人たちが笑いながら出てくるんじゃないかと。
実は何か賭けをしていて、藤原さんが負けて、私にプロポーズするのが罰ゲームで。
プロポーズして私が本気になったところに、あの人たちが笑いながら出て来て、バカにされて笑われて。
ーーお前みたいなブスと誰が本気で結婚するかよ。
みたいなセリフを吐かれて。
そういうシナリオ?
…………でも。
「違うけど?」
藤原さんの口から出て来た言葉は私の予想と違っていた。