誰にも言えない秘密の結婚




「周りを見渡したしても誰も出て来ないし、罰ゲームでも何でもないから」


「えっ?」



真剣な目をして私を見ている藤原さん。



「吉田にさ、仕事を辞められたら困るのは本当だよ。吉田のこと、嫌いじゃないのも本当。でも好きかと言われたらわからないのも本当。吉田の今までの経験から人を信用できない気持ちもわかる。だけど俺は吉田に嘘は言ってないよ?」


「藤原さん……」


「だけどな、過去のことでいつもマスクして、長い髪で顔を隠して、事務所でもあいつらの暴言や無視に悲しそうな目をしている吉田を見るのが辛いんだよ。上司のくせに助けてやれないのが情けなくて……でも、吉田の話を聞いて助けてやりたいと思ったんだよ……逃げ道を作ってやりたいって……だから結婚って言葉を軽々しく言ったつもりはないんだ……」



再び私の目に涙が溢れてきた。


ポタポタと地面に落ちていく涙。


堪えきれなくなった私は、その場にしゃがみ込んだ。


嗚咽を吐きながら泣いている私の目線に合わせて、藤原さんもしゃがんだ。




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