誰にも言えない秘密の結婚




「拓海!お前、どこほっつき歩いてたんだよ!」



事務所のドアを開けた途端に社長の怒号が飛んで来た。


パソコンの画面を見たままそう言った社長が顔を上げた時、幽霊でも見てるかのように驚いた顔をして私を見た。



「あ、明、ちゃん?えっ?何で?」



社長から藤原さんに電話があった時、私と一緒にいると言ってたけど、まさか事務所まで一緒に来るとは思ってなかったんだろう。



「す、すみません……」



本当はちゃんと理由を言った方がいいのかもしれない。


でも今の私には謝ることしか出来なかった。



「空翔……大事な話がある……」



藤原さんの言葉に胸がドクンと高鳴る。



「大事な話?」


「あぁ、とっても大事な話」



社長が不思議そうな顔をして藤原さんを見る。


いよいよだ。


もし藤原さんと結婚することを話したら、社長はどんな顔をするんだろう……。





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