誰にも言えない秘密の結婚




「美味しいよ」


そう言ったのは藤原さん。



「うん、美味い」



と、社長。



「ホントですか?」


「うん」


「良かった」



父親以外で男性に手料理を振る舞ったのは初めてだった。


だから凄く緊張したけど、藤原さんと社長からそう言ってもらえて安堵した。



「拓海は、これからこんな美味い飯が毎日食べられるのか……羨ましい……」



社長にそう言われて、胸がトクンと鳴った。


社長は奥さんの手料理を食べてるんじゃないの?



「空翔は奥さんの料理を食べてるんじゃん。飯ウマなのに、そんなこと言ったらバチが当たるよ?しかも、超が付くくらいラブラブなクセに」


「まぁ、そうなんだけどな」



社長はそう言って少し照れたように笑った。


あんな照れた笑いをする社長は初めて見た。


って、毎日、奥さんの美味しい料理を食べてるんだ……。


今は里帰り出産のために実家に帰ってるから食べられないんだろうけど。


それだったら買い物に行って、ちゃんとしたものを作れば良かった。



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