誰にも言えない秘密の結婚




「ところで明ちゃん?」


「は、はい」


「仕事、どうする?」


「えっ?」



仕事、どうするって……それって……。



「辞めた方が、いいんでしょうか?」


「違う違う、そういう意味で聞いたんじゃないよ?」



社長はそう言ってクスッと笑った。



「あ、そ、そうだったんですね……仕事は、続けたい、です……」


「うん。そう言ってくれると思った。これからもよろしくね」



社長は優しい笑顔を見せてくれた。


でも……。



「あの、社長……」


「ん?」


「後藤さんたちには、その、黙っといて下さい……」



私がそう言うと、社長は少し驚いた表情を見せた。



「もし、私が結婚したとわかったら……何言われるか怖いんです……それに相手が藤原さんなので、藤原さんにも迷惑かけたくないですし……でもいずれは言わないといけない日が来るかもしれないですが、それまでは……」


「迷惑だなんて、そこまで気を遣わなくていいのに」



藤原さんはそう言ってくれたけど……。



「拓海の言うように、それまでは気を遣う必要はないと思うけど、でも、そういう明ちゃんの気持ちもわからなくもないから黙っとくよ」


「ありがとうございます、すみません……」



私は社長と藤原さんに頭を下げた。


あの人たちには絶対にバレたらいけない。


とくに有本さんには……絶対に……。




< 75 / 302 >

この作品をシェア

pagetop