キミの音を聴きたくて


「あれは……」



私のせいだ。




天音先輩がピアノを弾かなくなったのも。



あまり笑わなくなったのも。



全部が、私のせい。




償うこともできない、私の罪。



彼の傷を癒すなんて、不可能に近いだろう。




「文化祭お疲れ様、って。
ただそれだけだよ」



できるだけ、ニッコリと笑顔をつくって、自然な声のトーンでやり過ごした。



私を信用してくれている人達を騙すなんて心が痛いけれど、まだ全てを告げる勇気はない。




あの日告げられたことはあまりにも印象的で、忘れたくても忘れられない。



まだ頭の中でも整理がついていない、というのが現状。

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