キミの音を聴きたくて
「それは違うの。
デートなんかじゃない」
大袈裟なくらいに首を横に振って否定すると、観念したのかみんなは何も言わなくなった。
もう、錦戸くんったら……。
恋バナ好きな月野さんに言ったらどうなるか想像はついただろうに。
というか、悪いのは錦戸くんではない。
勝手にデートなんてでまかせを言った、天音先輩だ。
「陽葵ちゃん、じゃあ文化祭のときの……」
日々ちゃんが言おうとしているのは、きっと文化祭の帰りのことだろう。
他の人がいる前で呼ばれたから、余計に記憶に残っているに違いない。
「あのときは何を話したの?」
日々ちゃんにとっては何気ない質問だろう。
それだけで私がまた暗闇の底まで落ちるなんて知らずに、口に出してしまったんだろう。