偽りの婚約者に溺愛されています
「男の人と付き合ったこともないし、学生時代のあだ名は『王子』でした。特技はバスケットボール、趣味はジョギングと筋トレです。修吾さんが得することは、何一つありません」
あとで幻滅されるくらいなら、初めから潔く伝えたほうがいい。
あらためて一気に自己紹介すると、さっと立ち上がった。
「修吾さんがお付き合いしている女性たちとは、明らかに違うはずです。コレクションのひとつにもなり得ません」
女性と遊びたいから独身でいたい、と考える彼の役には立てそうもない。
ササ印を継ぐことだけが、修吾さんの目的ならば、なんのために智也さんに協力してもらったのかわからない。初めから本物の恋愛が、修吾さんとできるはずもないのだから。
『本当に好きな相手に出会うまで、恋人のふりをしてやるよ』
彼に言われた言葉のひとつひとつが、心に染みている。
確かに彼を好きだった。初めて本気で、彼をほしいと思った。
届かなくても、こんな形で終わりたくはないのだ。
これは、最後のプライドなのかもしれない。