偽りの婚約者に溺愛されています

「ちょっと待って。彼女たちは、単なる遊び仲間だよ。確かに昔は、荒れて遊んだ時期もあったけど。今はないよ。ちょっと大げさに言ったんだ。君に手を貸してもらうためにさ」

言いながら修吾さんも立ち上がる。
そのまま、私のいるほうへと歩いてきた。

「だからさ、そういうところが面白いんだよ。君は真っ直ぐで嘘がない。このまま終わりにするのが、惜しくなったんだ」

私の手をそっと握ると、彼は腰を折って目線を合わせてきた。

「着物がとても似合ってる。男勝りだとは思わない。君は可愛いよ」

彼の言葉が、いつかの智也さんの言葉とかぶる。
思い出しただけで、目が潤んできて視界が微かに霞んだ。

「辛い恋はしなくてもいい。俺が、兄さんの代わりになるからさ」

顔が徐々に近づいてくる。
足がすくんで、逃げ出すこともできない。

__バンッ。
「待てっ」

またしても、いきなり開いた襖の奥には智也さんが立っていた。


< 108 / 208 >

この作品をシェア

pagetop