偽りの婚約者に溺愛されています
無言でふて腐れながらも準備をする私に、いきなり彼が耳元でボソッと囁く。
「心配するな。夜になったら、また可愛がってやるから。とろけるほどに甘やかしてやる。期待していいぞ。言ったよな。全然足りないと」
「い、いや!なにも、私はそんな!」
ネクタイを締めながら、ニヤッと笑う彼を見る。
イタズラな目で笑う彼には、やはりどうしても敵わないと思う。
だけど仕方がない。『王子』の王子様は、最強でなければならないのだから。
これから始まる甘い日々が、私をどこまで変えてくれるのかを期待する。
私だって自分でも見てみたいのだ。こんな私が、本物のお姫様になった姿を。
きっと、愛される自信が溢れ、綺麗になっているだろう。そんな私を男性と見間違える人など、もういないはずだ。
有能な企画開発者で、ササ印の時期社長であるあなたならば、きっと完璧に夢を見せ続けてくれるだろう。
期間は無期限なのだ。最愛の彼はずっと、求めるがままに私を愛してくれる。
「夢子、急いで。店が閉まる」
「はいはい。分かってますよ」
「返事は一回!」
いつもの調子で言いながら、慌てた様子で部屋を出る彼に付いて行く。
その後ろ姿を見ながら、私はクスッと笑った。
あなたを好きになって、偽りの婚約者になってもらって、本当によかった。
私はこれからも、今よりもっとあなたを好きになっていくのだろう。
あなたを愛してる。
お金では買えない無期限の愛は、この指輪とともに輝き続けるだろう。
この先ずっと、永遠に__。


