【完】きみしょーこーぐん。
「そーいや明日ってホワイトデーだな」
突如思い出したように狭山が言い出す。
その話、聞きたくない。
狭山が誰にチョコを貰って誰に返すなんて、聞きたくない。
本命の女の子に渡すなんて、聞きたくない。
「俺もお返し買わないとな~。あっ、そういやさ「あっ!」
話を続けようとした狭山の声を自分の声で遮る。
すーちゃんと狭山が突然声を出した私を注目している。
急にどうした?とでも言いたげだ。
えっと…気まずい…。
「とっ、トイレ!行ってくる!」
こんなときは逃げるに限る。
ちょっと気になるけど、やっぱり嫌だ。
狭山の好きな人。
それが私ならいいのに、なんて、柄にもないことを考える。
モテちゃってさ、狭山のばか。
「私が一番好きなのに…」
比べるものでもないけど。
人の想いなんて比べてはいけないんだろうけど。
でも、私の中で狭山への想いは他の何よりも大きいから。
そう思っちゃっても仕方ないんだ。