エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「旦那さまのお知り合いの方ですよね?お通夜の席でそんなに騒がれますと、困ります。申し訳ございませんが、お引き取り下さい。」

 黒沢の口調は、ホスト時代に立ちの悪い酔っ払いを体よく追っ払う時のものだったが、

 内心、

(このアマ!俺をなめやがって)

と自分が一杯食わされた事への怒りで爆発寸前だった。

 おかげで二階の火菜たちの事には全然頭が回っていない。

 ここまでは完全に望と谷川の奇襲作戦が効いていた。

 おかげで、火菜は勇と話しをして、弥生さんから預かったペンダントをもらった。

 しかし、中を見るのはココを出てからと言う事は覚えていた勇なのに、いきなり階下で騒ぎがあって、火菜が入ってきたので、勇は混乱して、青いペンダントを火菜に渡していた。

 運命の歯車はどんどん噛み合わなくなっていく。

< 156 / 201 >

この作品をシェア

pagetop