エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

「ハイ。黒沢です。あの人となら、どんな事でもやれそうな気がします。」

「そうだな。お前自身、賢くて優秀な娘だったのに、ワシはお前の病気の事が気になり、後継ぎの男子を必要とした。それが今回の事の起こりだ。だから悪いのはワシだ。」

「それは仕方ない事ではありませんか！？」

「いや、お前も辛かっただろう。ワシの為に色々と手を汚した。すまない。本当に申し訳なかった。」

　その場で、大輔が土下座をして詫びるので、美佐子は

「お父さま、誤らないで下さい。すべては自分でやった事。さあ、顔を上げて下さい。」

と促した。

「でも、良かった。いいパートナーがみつかったのなら。」

「はい。それで、明日の告別式には私の秘書として参列させますがよろしいでしょうか？」

「ああ、秘書としてならいいだろう。それが顔見せにもなるし丁度いい。ワシもそのつもりで皆さんに紹介するからな！」

　美佐子はますます、黒沢が大切な存在になっていた。