エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

　本当に長い一日だった。

　火菜は、いよいよ明日になった脱出を前に、眠れずにいる。

　勇は、火菜と遊ぶ夢を見ながらぐっすりと眠っている。

　弥生は、なんとなく騒ついている広間が気になって寝付けずにいる。

　谷川と望は、夜のうちに火菜たちに身に何も起きないように、見張るつもりなので徹夜覚悟だ。

　源は車の中でまだ眠ったままだ。

　そして、屋敷内では祭壇前でテレビマンたちが、撮影したり、時折、相談しあったりして、これまた徹夜覚悟である。それがバイト料一人５万の力だった。

　それを少し離れたところで見守る黒沢だったが、頭では、あの『青いペンダント』をいつ奪うかという事と『源の葬り方』を考えていた。

　どちらも、一筋縄ではいかない難題なので、睡魔に襲われる事はなかった。