エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 車内は早朝とはいえ30分もしないうちに、サウナ状態になってグングンと温度が上がっていく。

 あまりの暑さに、源は目を覚ましたが、体はピクリともしない。

 目の前にクーラーのスイッチがあるのに、まったく体が動かない。

 源はまさに、生き地獄を味わっている。

 時計はやがて、

『 7:00 』

になろうとしている。

(やっと時間が分かった。式まで後5時間だ。それまでに薬の効き目は切れるだろうが、その前に命が消えそうだ。なんとかならないだろうか。)

と考える意識も段々と遠退いて、もうダメかと思ったその時、車のドアが開いた。

(俺は夢を見ているのか!)

 源の目に映ったのは、昨日、源が熱中症から救った男だった。

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